風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

道を照らし続けてくれて

雨が降っていましたが、晴れてきました。
昨日、蜷川さんの告別式が営まれました。
【 藤原竜也、小栗旬、綾野剛、松坂桃李らが蜷川幸雄さん送る 】
あまりにも大きな存在を失い、とても悲しいけれど、
決意、強さも感じる写真だと思います。
小栗くんは平幹二郎さん、大竹しのぶさん、吉田鋼太郎さん、
藤原竜也くんとともに、弔辞を読み上げました。
皆さん、それぞれの思いが感動的でした。涙しました。
小栗くんの弔辞、全文です。


【 小栗旬「不安だから、こっそり夢でもしかりに来て」…蜷川幸雄さん告別式・弔辞全文 】
12日に死去した日本を代表する演出家で文化勲章受章者の蜷川幸雄さん(享年80)の葬儀・告別式が16日、東京・青山葬儀所で営まれ、俳優の小栗旬(33)が弔辞を読み上げた。


<弔辞全文>


蜷川さん、昨日の晩、鋼太郎さんが、蜷川さんは台本を持つのが嫌いな人だから俺たち弔辞は読まずにいこうと言ったのに、今日、鋼太郎さんが読んでいたので、僕も読ませていただきます。
僕がこんなところに立って、蜷川さんに何かを言うんだって。きっと、「バカ小栗、お前に言われることなんてなんにもねえよ」って笑われちゃいますね。いろいろ考えたんですが、あまり堅苦しくても、くだけすぎても怒られそうなんで、なんとなくいきます。
蜷川さん、どうします? 予定してた僕との公演。嫌われて、俺も勝手に嫌って、仲直りしてもらって、やっと一緒にできると思っていたのに。あんなにしっかり握手もしたのに、約束したのに。悔しいです。
蜷川さんと過ごさせていただいた日々のことを、たくさん思い出していました。なんででしょうね。輝かしい思い出の日々のはずなのに、怒られたことばっかりが出てきます。本当にお前みたいな不感症とは二度と仕事したくない、へたくそ、雰囲気、単細胞、変態、はあ〜君おじさんになったね、なんかデブじゃない?デブだよ、デブ。なぁ、りえちゃん、そう思わない? ピスタチオみたいな顔…あ、この最後のは竜也に言われた言葉でした。
もっとうまい文句もいろいろ言われたんですけど、そのへんは右から左に流していたんで忘れちゃいました。
先日もう会うことのできなくなってしまった晩、いてもたってもいられなかった数人で集まり、蜷川さんとの思い出話に花を咲かせました。そのとき、やっぱり僕らは蜷川幸雄という人間を中心にした大きな劇団の一員だよね、という話しになりました。本当にそう思います。なぜならそれぞれが蜷川さんの優しさと気配りと、その後の思いやりを感じているからだと思います。
僕をこの劇団に入れてくれて、なんでみんな、小栗の格好よさに気づかないんだろうな。大丈夫、絶対俺が伝えてやると言って、見たことのない数々の景色に連れて行ってくれて、信じてくれて、ありがとうございました。今僕がこの場所にこうやって立っているのは間違いなく蜷川さんの劇団の一員にしてもらったおかげです。
まだ僕はちょっと若いので、会いに行くのは多分まだまだしばらくかかってしまうと思いますが、僕が会いに行くまでにそっちで新しいハムレットの演出を考えておいて下さい。その日に、「ダメになったなぁ」と言われないように、僕は僕で、こちらで苦しんでみようと思います。でも不安だから時々で良いからこっそり夢にでも叱りに来て下さい。待っています。休むのが嫌いな蜷川さんだったから、きっとゆっくりなんてしていないだろうけど、少しはゆっくり休んでください。僕の生意気をいつも受け止めてくれてありがとうございました。とことん踊らせてくれてありがとうございました。道を照らし続けてくれて、本当にありがとうございました。小栗旬


小栗くんらしい弔辞だったなあと思います。自然体の声でしたね。
ちょっと早口になったのは、涙をこらえるためだったのでしょうか。
そういえば、蜷川さんと小栗くんは似ていると、
翻訳家の松岡さんに言われたことがあって、
それは弱い部分を見せたくないから思い切り強がるところとか。
蜷川さん自身も、
「気質的にシャイなところが俺と似ていて気持ちがよくわかる」と、
仰ったことがあって、
小栗くんの弔辞を聞きながら、そんなことも思い出しました。
私と同じで、蜷川さんも細身の小栗くんが好きなのねとか(笑)、
そしてやはりそうだったのですね。
何年も疎遠になっていたのは、そんなことがあったから。
だから「ムサシ」再演にはちゃんと出るべきだったのに〜とか、
しかしこれも二人に何があったのかは二人にしかわからないけれど。
やっとやっとまた蜷川さんの舞台に立てると思ったのに、
目前で「小栗ハムレット」が叶わなかったのは、本当に残念です。
小栗くんの弔辞を聞きながら、実現は難しいかなと思いました。
でもちゃんとシェイクスピアも演じられる俳優さんではいてほしいです。


“見たことのない数々の景色に連れて行ってくれて、信じてくれて、ありがとうございました。”
私たちもその景色を一緒に観ることが出来て、とても嬉しかったです。
“僕の生意気をいつも受け止めてくれてありがとうございました。とことん踊らせてくれてありがとうございました。道を照らし続けてくれて、本当にありがとうございました。”
本当に小栗くんの道を照らし続けてくれて、ありがとうございました。
私たちも信じてついて行くことができました。
お別れの曲は、リベラの「サンクトゥス」。
フォーティンブラスの初々しいお辞儀、
正装のオーランドーのオーソドックスな上品さ、その美しさとともに流れた曲、
何度も何度もカーテンコール等で使われた曲でした。
この曲を聴くと、いつも胸がいっぱいになります。
小栗くんが蜷川さんの演出を受けた作品、「ハムレット」のフォーティンブラスは、
wowow でしたけど、
「お気に召すまま」(初演・再演)「間違いの喜劇」「タイタス・アンドロニカス」
カリギュラ」「ムサシ」をすべて生で観ることができた幸運に、幸せに、感謝します。
蜷川さん、美しく素敵な心掴まれる素晴らしい舞台を、
本当に本当にありがとうございました。


今日、さいたま芸術劇場のHPにて、「ハムレット」中止のお知らせが出ました。
【 謹告『ハムレット』『近松心中物語〜それは恋〜』公演中止のお知らせ 】
彩の国さいたま芸術劇場蜷川幸雄芸術監督のご逝去にともない、関係各所と協議の上、10月に上演を予定しておりました蜷川幸雄演出『ハムレット』公演、ならびに平成29年1月に上演を予定しておりました、秋元松代作・蜷川幸雄演出『近松心中物語〜それは恋〜』公演の中止を決定いたしました。
蜷川幸雄芸術監督のご冥福をお祈りいたしますとともに、公演を楽しみにされていた皆様に心よりお詫び申し上げます。


本当に本当に残念で悲しいです。
14日のコメント欄にピースさんが書かれていたように(ありがとうございます)、
蜷川さんとのシェイクスピアハムレット」が、
「風色の椅子」のゴールのようになっていたので、
今、ちょっとどうしたらいいのかわからない・・・。
本当に目前だっただけに、立ち直れないくらい残念なのですが、
でもマリさんが書かれていたように(ありがとうございます)、
「小栗くんが蜷川さんの深い愛を感じながらのお別れだったのが救いです。」と、
それは本当にそうだったなあと思いました。
あれほど数多くの俳優さんたちの中から、
弔辞を読む大役も任せられ、先頭に並んでお見送りができて、
最後の「ハムレット」に選んでもらえた。
“仲直りしてもらって、やっと一緒にできると思っていたのに。あんなにしっかり握手もしたのに、約束したのに。悔しいです。”
小栗くんが一番、悔しいけれど、辛いけれど、悲しいけれど、
これからは小栗くん自身が、自分の進むべき道を照らしながら、
蜷川劇団の一員として、誇りを胸に精進していってほしいです。
演技の深さを追求し、蜷川さんの教えと深い愛を心に留めて。
蜷川さん、ときどき小栗くんの夢に出てきて、叱ってあげてくださいね。
そしてシェイクスピアを演じる俳優さんでいてほしい。
今回は中止になりましたが、いつかは「ハムレット」を演じてほしい。
いつかいつか小栗ハムレットに巡り会えますように・・・。
ほんの少し希望を持ってもいいですよね(笑)。