風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

オーランドーとカイユス

曇り空です。

このブログが「風色の椅子 第二楽章」になってから、

いつも最後に、思い出の作品の感想とか、台詞の一節を書いているのですが、

今年は「お気に召すまま」と「カリギュラ」でいこうと思っていた矢先、

「お気に召すまま」は坂口健太郎くんで、そしてなんと「カリギュラ」を菅田くんで、

上演するという情報が入ってきました。

そうか~って思って(笑)、もう少し後でもよかったんじゃないかなと思ったら、

小栗くんが演じてから、もう12年も経っているんですね。

それならこういうお話が来るのは当然かもしれません。

でもでも私にとって、

「お気に召すまま」は初めて小栗くんを生で観た大切な舞台でしたし、

カリギュラ」は、上演後、感動と涙で椅子から立ち上がれなかったのは、

後にも先にもこの舞台だけでした。

本当に本当に素晴らしくて、演劇の力をまざまざと感じました。

あのカミュ+蜷川さん+小栗くんの置かれた状況+24歳の彼の息を呑むような美しさ、

これらがあまりにもぴったり嵌って、まさに奇跡のような壮絶な美しさの舞台でした。

マイク等、人工的なものを通さず、ただ空気の中を伝わってきた、彼自身の声。

シピオンに詩作について尋ねる優しい声、

最後の最後になって、エリコンを呼ぶ声。

そしてその美しい姿。

立つ、歩くってこんなにも美しい。気高く、まっすぐで綺麗で、

そうかと思うと、うづくまったときの手首の細さ、

セゾニアにしがみつく、細くて長い指。

傲慢で、残酷で、知的で、繊細で、脆くて、

小栗くん自身が持つ、痛々しいのだけど、生々しくない、

どこか乾いていて、しかし叙情的なもの。

そこへ青年期特有の、ゆらめき、怒り、切なさが加わって、

本当に心奪われました。

当時、突き放たれた短編の詩のようなカリギュラだったなあって、

思ったことを覚えています。

それからとにかく台詞が美しくて、翻訳された岩切さんの戯曲はもちろん、

詩集も買ってしまうほどでした(笑)。

その台詞については、あの当時「LOOK at STAR」という雑誌で、

小栗くんと蜷川さんが対談をしています。

 

蜷川「でもセリフが詩だろ?どこをとっても美しいよな」
蜷川「それは天性の才能だと思うんだけど、おまえはたとえ古典のセリフを喋っても、
   ある種の日常的なリアリティがくっ付いてくるんだよ。
   本人の前では癪だからあんまり言いたくないんだけど(笑)。
   発声も含めて、相手の心に柔らかくスッと入っていく」
蜷川「大の男が“月がほしい”とかさ。そんな言葉に説得力を持たせるって、
   大変なことだと思う。小栗はその点、まず見た目がいけるだろ」
小栗「カリギュラは自分が美しいことを自覚してて、だから愛されることも、
   利用したし、そういうところで自分が愛されることに、
   苛立ちも感じているような気がして」
蜷川「だから憧れるし共感するんだ、カミュの世界に。
   繊細で傷つきやすいけど、虚無に通じるほど明るいからね。
   カミュがフランス人だからかな。南仏の日差しのように、
   透明度の高い暗さなんだ。そこが昔から大好きでね」
蜷川「俺が生きている内に、小栗を天下無敵の俳優にするよ」

 

最後の言葉は、本当に本当に嬉しいですよね。泣きたいほどに・・・。

小栗くん、またちゃんと古典を演じてほしいですよね。

そして蜷川さんのお好きな南仏の日差しは、

実は小栗くんの中にあるものではないかと思ったりします。

小栗くんの中にある、ある種独特の明るさはこれに値するのではないか、

それが今はポップな方へいっていますが、

古典にも、特にヨーロッパ系の古典に、よく合うのではないか、

蜷川さんの目は確かで、蜷川さんの愛に育まれた小栗くんですから、

本当に本当に、また彼の魅力全開の古典を観てみたいです。

しかし12年前に観た、オーランドーもカイユスもまだまだ鮮明にそれは美しく、

私の心の中に息づいています。

その当時の小栗くんへの想いもまた甦ってきました。

あの当時、リアルタイムで生で観られた、その幸運に感謝します。

ではいつものように最後は、先日の「お気に召すまま」の台詞の続きを書きますね。

 

♪ お気に召すまま 台詞より ♪

ジェイクイズ「君の最大の欠点は恋をしていることだ。」
オーランドー「その欠点だけは、あなたの最高の美点とだって取り替えたくはない」

 

ロザリンド 「さあ、あたしを口説いて、口説いて、今のあたしはお祭り気分、
       すぐにいいわと答えるわ。さあ、あたしにどんなことが言いたいの、
       あたしがあなたのほんとのほんとのロザリンドだとしたら?」
オーランドー「何か言う前にキスしたい」

 

オーランドー「誰の思いだってみんなそうさ、羽が生えてるんだから。」