よく晴れました。
ご好意で、「雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた」のパンフレットの中の、
蜷川さんと三池監督の対談のページを読むことができました。
ありがとうございます。とても面白かったです。
二人に共通点が結構あって、反逆児の二人という感じ?(笑)。
大御所になっても、自由で、挑戦的、反抗的、エネルギッシュで、素敵でした。
少し小栗くんのことも出てきます。
では、印象的な部分を書き出してみますね。
蜷川さんのところへ、三池さんがゲストという形の対談です。
三池さんは今、「十三人の刺客」の準備中。
蜷川「“こうやれば当たるだろう”というところは、はじめから拡大しない。」
三池「創る前にプロデューサーと打ち合わせをすると丸くなっちゃうので、
了承したフリをして撮影に入って(笑)、出来たものが面白ければ、
考え方も変わってきますからね。色々な意味でギリギリの作品になるなと。」
蜷川「それは面白そうですね。
そのはらの括り方には、ある種の勇気がいりますよね。」
三池「そうですね。ただ、守るものがあれば勇気が必要でしょうけど、
自分は何もないんですよね。撮れることが楽しいだけで。
観客には裏切りがあればいいかなとも思うし。
1800円でご機嫌とるワケにはいかんぞ、っていう。」
三池「現場の人間だけが共有できるものがあると思うんですよ。
立派な映画は創れないかもしれないけど。
何十年苦労してもパッとしてこなかった俳優が、
そのカットを撮った瞬間だけ“あぁ、オレ役者やってて良かったなぁ”と、
思える一瞬ぐらいは創れるんじゃないかな、と。」
三池「“ビジターQ”ですか。」
蜷川「それ!よくあんなの撮るなあ、って。
メチャクチャすぎて口では説明できない(笑)。」
三池「ローバジェット(低予算)ゆえに自由なんですよね。
ああいうものを作っていたいですね。ヨーロッパには特殊なファンがいて、
そういう人たちは、三池は最近全国公開のものばかりやっている、
もう俺たちの知っている三池ではなくなった、とか言ってるけど(笑)。」
蜷川「そう、イギリスの若者に三池さんってすごい人気があるんですよね。
ファンが多いの。」
三池「なんかヘンな監督と思われてるみたい。」
三池「今の映画は深いところを描かずに、物語の展開だけを、
気楽に見ていられる方向に行ってしまってる。イラつくんですよ。
蜷川さんと同じです(笑)。」
蜷川「ひんしゅくを買いたくなるんだよね。」
三池「そうそう、そうです。」
蜷川「荒んでやりたいとかさ。」
三池「ありますね(笑)。」
三池「“クローズ〜”もそうですけど、よそでやれない特別な場所だと、
思ってくれてるのかな。小栗旬は売れれば売れるほど、
みんなに共感される、愛される人にならなきゃいけないわけでしょ。
主役ってそういうものじゃないですか。
でも、もともとはアウトローになろうとして役者という生き方を選んでるのに、
どんどん普通の人間を演じなきゃならなくなるという苛立ちがある。
そのストレスを吐き出してもらうのが自分の現場というか。
今の人たちは、みんなたぶん面白くないんだと思う。
だから小栗旬にとっては、蜷川さんのお芝居が絶対に必要なんですよ。
ベースはそこにある。一緒にやる度に全然違ってますよ。
奥行きが出てきて、いい男になってる。“ムサシ”もよかったですね。」
蜷川「そうですね。小栗とは数年後にまた仕事しようと言ってるけど、
俺は自分のことが心配。ボケ老人になってるかも。」
三池「信じられないエネルギーですよね。」
蜷川「いや、俺は三池さんに負けねぇぞ、って勝手に思ってるんです(笑)。」
他にはやはり現場で生まれるものを大切にする思い、現場派、ギャンブル感等が、
蜷川さんからも三池さんからも伝わってくる対談が続きました。
この対談で注目すべきはやはりここですね。
“だから小栗旬にとっては、蜷川さんのお芝居が絶対に必要なんですよ。
ベースはそこにある。一緒にやるたびに全然違ってますよ。
奥行きが出てきて、いい男になってる。ムサシもよかったですね。”
本当に、本当にそう思います。
以前、三池さんは、「ぴあ」の「小栗旬の時代」という特集の中で、
“今、彼にとって唯一の精神的逃げ場は蜷川さんの舞台なんじゃないかと、
思うんですよ。なにしろ感情を剥きだしにして、それをライブな空間で、
できるわけですから。逆にもしそのはけ口を封印してしまったら、
彼は役者としてどうなるのか。そうしたらもっとすごいことに、
なるんじゃないかって気が僕はしてるんですけどね。”と言っていて、
これを読んだときは、蜷川さんと三池さんで、小栗くんを、
取りあっているようにも思えたのですが(笑)、でも今回の対談を読んで、
三池さんもそう思ってくれたんだなあって、嬉しかったです。
それから「クローズZERO 2 」について、改めて、美藤(兄)を刺してしまった川西や、
拳さん、裏切りを続ける鷲尾へも、きちんとスポットが当たっていたのは、
むしろ弱いもの、情けないもの、迷うものへの、
三池さんの愛ある目線によるものだなあと思いました。
その中に、源治も入っていますよね。
芹沢や、鳴海とか、揺るぎない、磐石な強さに目が行きがちですが、
三池さんはやっぱりそれに相反するものを描きたかったんだなあと、
この対談を読んで思います。
そして蜷川さん、“小栗とは数年後にまた仕事しよう”〜数年後が、
ちょっと遠いですが、でもきっとまた素晴らしいものを、
小栗くんに考えてくれていると思うので、楽しみに待ちたいと思います。
またよりいっそう奥行きが出るいい男にしてください(笑)。