風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

ジョン王 愛知公演 1月27日 御園座(ネタバレあり)

晴れました。寒さは続きます。

昨日1月27日雪とみぞれの中、御園座へ「ジョン王」の観劇に行ってきました。

まず1回でも観ることができたこと、感謝します。

愛知公演はジョン王は鋼太郎さん、フランス王は櫻井さんに、

そしてルイ王子は休演の白石さんに代わって、急遽、山本直寛さんが演じられました。

山本さんはいくら出演中とはいえ、短期間でルイ王子の台詞を覚えて、

さぞ大変だったろうなあと思いましたが、立派にやり遂げていらっしゃいました。

私は小栗くんの舞台は「ヤングフランケンシュタイン」以来5年4ヶ月ぶり、

小栗くんのシェイクスピアにいたっては「お気に召すまま」(再演)以来、

なんと15年6ヶ月ぶり・・・なんか果てしないほど久しぶりでした(笑)。

でもだんだんと観ているうちに、シェイクスピアだあ〜って、

実感してきました。

あの山のような形容詞と溢れるような比喩、言葉、言葉、言葉が降り注ぎます。

今回はまた戦争のシーンが多いので、憎しみ、恨み、悲しみ、強欲等々、

まさに言葉たちが豪雨のように降り注ぎました。

でも鋼太郎さんと小栗くんが抱き合うシーンを見ると、

ああ、「お気に召すまま」のオーランドーと侯爵だわって思ったり、

小栗くん演じるフィリップが手にキスするシーンなどを観ると、

うっとりしたりしていました(笑)。

そして久々に舞台で観た小栗くんはもう圧倒的でした!

ずっと舞台に立っていた人みたいに、声は通る、台詞ははっきり聞こえる、

しかも余裕があり、感情の乗せ方が情熱的であり抒情的、

何より劇場中を支配するようなオーラと、

本人自身が光を放つべく輝くような華がある!

小栗くんの現在位置はこれほどだったのかと心震えました。

やはり板の上の小栗くんは特別なんだなあと思いました。

「ジョン王」上演中にこんなこと言うのもあれなんですが、

今この小栗くんで「ハムレット」を観たかったなあと切実に思ってしまって、

絶対絶対演じてほしいです。40代のうちには必ず!

そんなことも思いながら、実はラッキーな出来事が2つありました。

私の席は凄く前の方ではなかったのですが、下手の通路に接する席で、

この席が幸いすることになります。

ではここからはネタバレになりますので、読みたい方だけお願いします。

 

 

 

ジョン王              シェイクスピア

                  フィリップ 小栗旬

                  ジョン王  吉田鋼太郎

私は全く前情報を入れずに観劇しました。

「開演5分前です」というアナウンスはありましたが、

それきりブザーは鳴らなかったので、いつ始まるのだろうと思っていたら、

私の席のすぐ前の通路に、

赤いパーカーとジーンズ姿の背の高い足の長い青年が立っていて、

「あれ、席を探してるのかな?」と思っていたら、それが小栗くんでした!

(ラッキーな出来事その1)

5年4ヶ月ぶりの舞台の小栗くんは背中から(笑)。

「ジョン王」としてはフィリップが現代と12世紀のイギリスを繋ぐ役目として、

描かれているような、上演が2年ほど遅れたために悲しいことに、

今の世の中とリンクするような演目になってしまい、だからこそ反戦のメッセージが、

色濃く感じられた舞台になりました。

役者さんたちは物凄く熱量が高いお芝居で、中村さん演じるエリナー、

玉置さん演じるコンスタンス、目を見張るような強力なお芝居で、

髙橋さん演じるヒューバートとアーサーとのシーンは悲しくて、

アーサー役の子役さんも大人に負けず凄い熱演で、引き込まれました。

アーサーが歌っていた曲「小さな木の実」は、

私が小さい頃好きだった曲で(「みんなのうた」で流れていましたよね)、

まさかこんなところで聴くなんてと違う驚きがあったり、

他には米ソ冷戦時代のフォークソング等、少しアングラ風の演出も、

この題材ならではと思いました。

フィリップも歌うシーンがあるのですが、

小栗くん、歌、上手くなっていましたよね(笑)。いい声だなあと思いました。

それから題材的に舞台装置は分かります、でも衣装はあのプログラムにも載っていた、

前の公演用の衣装で観たかったかな。

特にフィリップ、マントらしきものを纏っているときがあったのですが、

私の好み的には(笑)、もっと豪華なマントをバサーっと引き摺って欲しかった。

せっかくのシェイクスピアなので、衣装はもっと綺麗めでもよかったかなあと思ったり。

それからエンディングがとても変則的なもので今まで観たことがないものでした。

死んだはずのジョン王の鋼太郎さんが起き上がったと思ったら、

他の皆が出てきて、カーテンコールのようになり、

でもフィリップ演じる小栗くんはその場で止まったままなのです。

そして皆がはけてしまうと、舞台奥から爆音と煙が吹き上がり、

そこに立ち尽くしていたフィリップをヒューバートが銃で狙っている様子が。

すると小栗くん演じるフィリップは1枚、1枚、鎧を脱ぎ、

フィリップとして覆われた服を脱いでいきます。

この仕草があまりにも1枚、1枚、丁寧に脱いでいくので、

それこそ昔々アングラ劇団等であったように全部脱いでしまうんじゃないかと、

ちょっとドキドキしてしまいました(笑)。

そして最初に登場した赤いパーカーとジーンズ姿の現代人に戻っていくのですが、

その後、舞台を降りて下手の通路を歩いて行くのです。

(ここでラッキーな出来事その2)

そう、私は下手の通路側、通路に接する席だったので、

まさにどんどん小栗くんが迫って来る状態!

手を伸ばせば触れるくらいの距離まで近づき、通り過ぎて行った、

フィリップとしての小栗くん。

その物語に身を置く彼の眼差しがもう、ハッとするほど美しくて、

ああ、本当に俳優さんなんだなあと、その一瞬で役者の真髄を見たような、

ちょっと震えました。

そう思う反面、見惚れるように整った美しいお顔と、

長身でバランスの取れた彫刻のような身体、

こういうものを手に入れている本人は、常々どんな気持ちなんだろうかと、

変なことを考えたりしました(笑)。

今はこういう世の中なので、

通路を使ったお芝居はしないだろうなあと思っていたのですが、

でも昨日の観客の皆さんは凄く静かに真剣にご覧になられていたので、

小栗くんも安心して通路を歩いて行けたのではないでしょうか。

「お気に召すまま」で通路で花束を胸にロザリンドへ向かうオーランドー、

「タイタス・アンドロニカス」で鎖に繋がれたまま通路を歩いていたエアロン、

「間違いの喜劇」で疾風のように通路から舞台に駆け上がったアンティフォラス、

思い出すだけで胸がいっぱいになります。

これからはどんどん劇場全体、通路も使ったお芝居ができるといいですね。

そんな感じで寒い中、久しぶりの御園座で、凄く久しぶりの小栗くんの舞台で、

凄く凄く久しぶりのシェイクスピアの舞台で、

とてもとても素敵な時間を過ごすことができました。ありがとうございます。

これからの公演が全て無事に上演されますように願っています。