風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

お気に召すまま

まだ朝晩冷えますね。
この間、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の話が出たので、
今日は「お気に召すまま」のことを。
もうすぐ1年になろうというのに、まだ思い出すと胸がときめくって、どういう事でしょうか。生の舞台の魅力なのかな・・・
実はこの「お気に召すまま」はちょっと運命的なものがあって(と自分では思っているんですが(笑)
むか〜し萩尾望都さんの「ポーの一族」という漫画が好きで、その中の「小鳥の巣」という作品の中に、クラスで「お気に召すまま」を演じるというシーンが出てくるんです。主人公のエドガーがロザリンド役で、「そしてあなたはぼくを愛する姫と思って いいよるまねをなさる」というセリフを言うんですが、それがすごく印象的で、いつかいつか何十年越しで見たいと思っていたのです。小栗くんのHPでその舞台を知った時は、ほんとにびっくりして、もうこれは観にいくしかないと、固い決意で、まわりを説き伏せ、次男を道づれに旅に出ました!ではここからは、その日の日記を書きたいと思います。なにしろ1回しか観てないので、事実と違うかもしれません。いつものように小栗くん中心ネタバレかつとても長いので、読みたい方だけお願いします。












2004年8月
新幹線のぞみに乗って、ほぼ5時間かけて、さいたま芸術劇場に着きました。
コロシアムのようなデザインの劇場で、やはり若い女の子が多かったです。2階席だったんですが、真ん中だったせいもあって、思ったよりも舞台全体がよく見えました。


AS YOU LIKE IT    お気に召すまま
        作         W・シェークスピア
        演出       蜷川 幸雄
        オーランドー  小栗 旬
        ロザリンド    成宮 寛貴


幕が開くわけでもなく、ブザーが鳴るわけでもなく、突然烈しいロックの音楽とともに、出演者全員が一斉に1階の通路から舞台へ駆け上がってきます。「あ 小栗くんだ」と思ったのもつかの間、背が高くて、軽やかに駆け上がる後姿にさえ、ときめいてしまった・・・着ていた自分の野球チームのユニフォームをさっと脱いでお芝居が始まります。


まずは、オーランドーの境遇を自ら説明します。三男のオーランドーは、父亡き後、長男に虐げられている様子。長男はオーランドーが、気品があり、身分の上下を問わず、誰からも愛されていることを妬ましく思っている。そうそう誰からも愛されそうだよね。見目麗しくて・・・
本当に小栗くんは、背が高くて顔が小さくてもうあまりあるほどに足が長くて、まさに理想的な体形。ほれぼれするほどスタイルがいいです。そして繊細な少年っぽい雰囲気も残しつつ、前から言われていたとおり、立ち姿が驚くほど美しい・・・こんなに綺麗な子だったんだなあって、特に舞台に立つととても映えます。


そうこうしているうちに、とうとう長男に命まで狙われるようになり、それを知らせに来た老僕アダムとのシーン。ここがなかなかよかったです。心優しいオーランドーの思いがよく感じられ、胸がいっぱいになってしまいました。年老いたアダムがこつこつ貯めたお金を差し出し、こんな老いぼれでもどこまでもお供しますと、一緒に逃げることをすすめます。膝まづき老僕の思いをしっかり受け止め、彼の涙を優しくふいてあげるオーランドー。感動しました。そして逃げ込む先は、アーデンの森。


そのアーデンの森が素晴らしかった。すべてグレーで奥行きがあって、照明で木漏れ日も上手く表現してあって、シックな素敵な森でした。その森には、宮廷を追放された前公爵が一行を引き連れて住んでいたのですが、そこへなんと、剣を手にしたオーランドーが登場。老僕アダムのために力づくで食料を奪いに来ます。ここが可哀想だった。どんなに長男にいじめられようと、品位だけは保とうと気高く生きてきたオーランドー。いくら老僕のためとはいえ、盗賊のようなまねをしなければならなかったなんて・・・その屈辱的な心のうちを思うと胸が苦しかったです。でも追放された身とはいえ、森の生活をかえって楽しみながら悠々自適な生活を送っている前公爵は、オーランドーに優しく声をかけ、事情を聞きだし、食料をわけてくれます。


いまさらながらシェークスピアのセリフは、美しい詩のようで素敵ですよね〜。感動します。小栗くんの口からシェークスピアが聴けて、とても嬉しかった。また声が少し少年っぽくて、涼やかで優しいいい声なんですよ。
それからオーランドーが実は前公爵に仕えていた家の息子だとわかり、「おまえの顔にあの男の面影が生き生きと描かれている」と、前公爵に顔を触れられ、力強く、抱きしめられます。ここはなんだか可愛かった。よかったね。オーランドー。


そうそうロザリンドとの話をしなくてはね。ロザリンドとはレスリング大会でお互いひとめぼれ。ロザリンドは自分がしていたネックレスをオーランドーに差し出します。このネックレスがよく光ってました。それと小栗くんの耳元にきらめくピアスの光もよく見えて、キラッと光るたび、なんだか切なくて・・・小栗くんはそこにいるのに、何故か幻のような夢のような・・・


二人はまたアーデンの森で出会います。中央に横たわっている大きな高い木に登っているオーランドー。この木に立っている時がまた、背の高さ足の長さが際立って見えて、溜息ものでとても素敵でした。そこへわけあって追放された男装のロザリンドが来ます。男装しているので、オーランドーはロザリンドとは気づかず、ロザリンドはオーランドーに「ロザリンド」とわざと呼ばせ、恋人同士のやりとりの練習をします。この二人の奇妙な関係が、なにかと可笑しくてよく笑いました。ロザリンド役の成宮くんも、可愛らしくていじらしくて、本当にオーランドーを好きでたまらない様子。オーランドーは相手を男だと思っているので、あんまり強く抱きしめられると、べりべりってはがしてみたり、可愛かったですよ。そんなこんなで、心優しいオーランドーは自ら傷を負いながらも、憎い長男の命を助けたりして、長男を改心させます。それからはハッピーエンドへ向かってまっしぐら。


「必ずロザリンドに会わせるから、明日正装して結婚式に来て」という男装のロザリンドの言葉を信じて、他にもいろいろなカップルが出来ていたので、正装して結婚式に出かけるオーランドー。この正装がそれはそれは素敵で・・・この姿を見て惚れない人はいないんじゃないかと思う位、目が釘付けでした。大きな白い襟の黒い膝くらいまである長い上着に黒いズボン。長身で細くて足が長いので、本当によく似合っていて、その姿で中央の木に佇んだりしていると、もうどうしようって思うくらい。そして想いがかなって、出会った二人は優しくキスをかわし、ダンスを踊るたびに長い上着の大きく割れた裾が軽やかに揺れて、とても優雅で華やかで美しかったです。時間よ、ゆっくり過ぎてねって祈ってしまいました。


カーテンコールは通路から出演者全員が走って舞台に駆け上がり、いっせいにお辞儀、それは踊るように、紳士淑女のように、客席からの拍手の大きさも忘れられません。主演の二人はそれから何度も舞台の奥へ入ったり、また出たり、投げキッスをしたり、二人手をつないで小栗くんはちょっと恥ずかしそうにお辞儀をしたり、そのうち会場全体がスタンディングオベーション。あたたかいいっぱいの拍手で包まれました。


前にいつ見たか忘れちゃったくらい久しぶりに演劇を観たんですが、本当にはるばる行ってよかったなあって思いました。やはり役者さん、裏方さん含めてみんなで作り上げているっていうか、そこに 異空間アーデンの森 が確かに存在していて、ホール全体が夢のようでした。主演が若い二人だったせいもあるかもしれませんが、まわりの役者さんがしっかり温かく支えている感じで、また二人がとても真摯に前向きに一生懸命に演じていて、その思いがすごく伝わってきて、本当にみずみずしいシェークスピア劇で心打たれました。


そしてなによりも小栗旬くんのなんと素敵だったことか。
高い背と、細くて足は長く、
まっすぐで綺麗で、立ち姿もそれは美しく、
彼はしなやかに軽やかに舞台を駆け巡り、
その恋する青年の想いは、繊細で凛々しく、
胸がいっぱいになるほどに心に響きました。
そうなんです。このくらいだろうなという予想をはるかに超えた舞台で、小栗くんはこんなにもオーランドーだったんだなあって、特にその気高さというか、上品さがすごく感じられて、感動してしまいました。凛とした気品溢れる21歳のオーランドーをずっと心に刻んでおきたい。


彼の演技にはいつも何かを感じます。その何かをうまく説明できないんですが、若さというか上り坂の俳優さん特有のものなのか、とにかくこれからの大きな可能性を感じ取れて、心惹かれました。こんなに素晴らしい舞台を観劇出来て、こんなに綺麗な魅力的な21歳の時を感じることが出来て、感謝です。シェークスピアの作品の中で、「お気に召すまま」はもっとも楽しく、幸福感に溢れる戯曲だと本に書いてありましたが、まさに見終わったあと、清々しく爽やかな幸せな気持ちいっぱいで帰ってきました。


ジェイクイズ   ロザリンドというのがあなたの恋人の名前でしたな?
           背の高さは?
オーランドー   このときめく胸のあたりです。