風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

カリギュラ 2回目 感想

小雨が降っています。
いつも若村さんのHP。可愛い?Tシャツを着た、可愛いふたりの後姿が、
写っていますよ。
http://www.syunca.com/private_cafe.cgi#
カリギュラ」昨日28日マチネ、観に行ってきました。
観劇後、都会の賑やかなクリスマスイルミネーションが、
自分の今の心情と、随分不釣合いだなあとか思いながら、
でもネオン管の美術とどこか似ているところもあって、
そんな喧騒の中、新幹線で帰ってきました。
カーテンコールは、客席の電気がついた後も出てきてくれて、
そういえば、前に見た、17日のときもそうでした。
でも今回は、ほぼオールスタンディングで、小栗くんと勝地くんが、顔を見合わせて、
嬉しそうな笑顔を見せていたのが、印象的。
最後の袖での、小栗くんひとりの、胸に手をあてた丁寧なお辞儀は、
晴れやかな笑顔とともに。
では、「カリギュラ」2回目の感想を書こうと思います。
やはりネタバレになりますので、読みたい方だけお願いします。













カリギュラ            作   アルベール・カミュ
                  演出  蜷川幸雄
                  カリギュラ  小栗旬
                  セゾニア   若村麻由美
                  エリコン    横田栄司
                  シピオン   勝地涼
                  ケレア     長谷川博己


1回目に観たときは、ものすごく圧倒されてしまい、どうしたらいいか、
わからないような状態だったのですが、
2回目は、ほんの少し冷静に観られました(笑)。
ところどころ少し違っていたような、小栗くん自身は、
コントラストがはっきりしてきたような、演じることを、
楽しんでいる雰囲気が伝わってきました。
そして今回は、やはり小栗カリギュラは、美しく、セクシーだなあって思いました。
狂気にとりつかれたような、銅鑼のシーンも、鏡にスプレーのシーンも、
それこそ、置いていかれそうなんですが、
まず、私が、とても美しいなあって思うのは、会食のシーンです。
これは、貴族達が、カリギュラのあまりの暴君ぶりに、陰謀を企てているところへ、
カリギュラが入ってきて、その凍りつくような雰囲気の中、会食になるというシーン。
なので、カリギュラの、嘲り、挑発、悪ふざけ、
そして恐怖が描かれるところなんですが、
これがものすごく美しいカリギュラなのです。
あの白い衣装の長い裾を引きずりながら、髪は綺麗に整えられ、
美しい横顔、繊細な顎の線、首には豪華な首飾り、
気品漂うまっすぐで綺麗な立ち姿。
怯える貴族ひとりひとりに、薄ら笑いを浮かべながら、無造作に抱きしめてみたり、
顔を近づけてみたり、挑発してみたり。
ケレアには、お構いなしによりかかって、
セゾニアの側に寄り、壁に手をつく姿がまた格好よく、色っぽく。
そうかと思うと、並べられた椅子の上を、
ピョンピョンと、こばかにしたように、両手を大きく広げて、歩く、
逆上して、テーブルの上を、食器を足で蹴散らしながら、大股で歩く。
その上、無作法で、下品な振る舞いの数々を、繰り広げます。
しかし、こういうシーンでさえ、上品さが失われないのです。
卑しい雰囲気がないんですね。
「タイタス・アンドロニカス」のエアロンを演じた最初の頃は、
生来の品の良さが、かえって仇とも言われましたが、
今回はそれが充分に活きる役で、
蜷川さんが「イギリスでも通用するある種の品の良さを持っているよね」と、
雑誌の中で仰っていましたが、本当にそう思いました。
また小栗くんは所作がとても綺麗ですよね。歩き方、立ち方、座り方。
動きにスピード感があるし、軽やかだし、そのテーブルの上から、
ただ降りるだけでも、それはふわっとその衣装が跳ね上がり、
羽がはえているようで、より美しく、恐ろしさも増していました。
この会食シーンは、とても自由に小栗くんが演じているようで、
ある意味、恐いシーンなんですが、観ていて、気持ちがいいです。
それからあの長い指が、遠くから見てもよくわかって、
とても色っぽいですね。
セゾニアの指にからませながら、自分の身体に這わせるように、
持っていくところ、シピオンを抱きしめながらその髪へ、背中へまわされた指、
最後の最後、夥しい剣に倒れながらも、
ケレアにその身を預けるように、そしてその頬を触れにいった、
血まみれの綺麗な長い指・・・。
このあたりは、もう涙、涙でした。
今回は、シピオンの別れの場面、セゾニアとの場面から、
ラストにかけて涙が止まらなくて。
もう、ねえ、どうしたらいいの!どうされたいの!って、抱きしめて問い詰めたいくらい。
カリギュラがずっとずっと傷ついていて、出口のない悲しみ、
本当に本当に孤独なんだという思いが、痛いほど伝わってきました。
いろいろごまかして、騙して、目をつぶって、みんな生きていくんだよ。
でも彼には出来ない、その頭の良さ、神経の繊細さ、純粋さが邪魔をするのです。
「まだ子供だ」の台詞が虚しく響く。
「あなたはすでに選んでいる」シピオンの言葉、辛かった。
滑稽な女装をしながら、ペディキュアを塗るシーン、切なくて・・・。
身の危険をどうにか知らせようと必死なエリコンに、
月の話を、愛した女の話を夢のように聞かせます。
そして詩人たちに詩を語らせ、笛を吹くシーン、
いろいろな思いが最後へ向かって、加速していきます。
「不可能!おれはそれを世界の果てまで探しにいった。おれ自身の果てまで」
美しく畳み掛ける台詞の数々は、
小栗くんの肉体を通して、カリギュラの言葉として、
突き刺さるように、伝わってきました。
シピオンとの、ケレアとの、エリコンとの、セゾニアとのシーン、
それぞれが美しく切なかった。
どの思いも届かない、いいえ、届かないふりをしていたのだろうか。
演劇の力、それを伝える人間の力をまざまざと思い知らされました。
深く深く豊かな時間をいただきました。