風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

私があなたの眠りを見張っていてあげるわ

晴れました。風が強いです。
東京国際映画祭」の記事をもうひとつ、書こうと思ったのですが、
今日は11月7日、アルベール・カミュのお誕生日、2007年11月7日は、
カリギュラ」初日だったということで、今日は「カリギュラ」について。
さきほど「ヒルナンデス」に若村さんが出演されていましたが、
ああ、セゾニアだわって思って、「家政婦のミタ」の長谷川さんと見ると、
ああ、ケレアだわって思って、いまだについついそう思ってしまいます(笑)。
カリギュラ」とてもとても好きな舞台でした。
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小栗くんのカリギュラ、本当に本当に美しかったですよね〜。
これが舞台の力なんだって、まさに実感した舞台で、
感動に打ちのめされて、涙が止まらなくて立ち上がれなかったのは、
いまだにこの舞台だけです。
カミュの頭の中はこうなっているんだ〜とも思ったし、
なにより台詞フェチ(笑)の私としては、
難解でしたが詩的で美しい台詞に心酔しました。
「蜷川妄想劇場」という本の中で、蜷川実花さんもこう仰っています。
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“つい先日も、父が演出した小栗くんの舞台「カリギュラ」を観てびっくり。
とにかく小栗くんカッコ良く色っぽく演出されていて、
「父さん、本気で小栗くんに恋してない!?」と思わず疑ったくらいでした。
舞台は彼が全編出ずっぱりですが、細身で筋肉質な肉体も、
醸し出すオーラもうっとりするほど美しかった。”


本当に、格好よくて色っぽくてうっとりするほど美しかったですよね。
蜷川さんには本当に感謝です。
やっぱり私は「お気に召すまま」オーランドーで、小栗くんに嵌ったので、
蜷川舞台での小栗くんは特別枠(笑)なんですよね。
また蜷川さん演出で、詩的で美しい台詞を語る小栗くんを観てみたいです。
では久しぶりに、「カリギュラ」の台詞を書いていきたいと思います。
さきほどテレビに若村さんが出ていたので、セゾニアとカリギュラの台詞を、
中心に書いていきますね。


セゾニア 「眠らなくちゃだめよ。ぐっすり眠るの。身をまかせきって。
       なにも考えてはだめ。私があなたの眠りを見張っていてあげるわ。
       あなたが目を覚ましたとき、世界はまたもとの味を取り戻している。」


セゾニア 「私の言いたい言葉は、難しいけれど、明白な言葉。
       本当に聞いてもらえたなら、
       この世でたったひとつの決定的な革命を完成させる言葉よ。」


セゾニア(礼拝の言葉)「この世に真実はないというこの世の真実を…」


セゾニア  「そう、あんたたちは知ってる。
       でも魂をこれっぱかりも持っていない連中はみんなそうだけど、
       あんたたちは、魂のありすぎる人に我慢できない。
       魂がありすぎる!それが厄介なのよ、そうじゃなくて。
       だから人はそれを病気と呼ぶ。
       知ったかぶりの連中が正しいってことになって、そいつらは満足する。
       あなたは、一度でも人を愛せたことがあるの、ケレア。」


カリギュラ「詩人は私の敵だ。もう会うことはない。整列して退場!
       私の前を行進してゆけ。そのさい、タブレットを舐め、
       そこに書かれた破廉恥の跡を消せ。」


セゾニア 「せめて一分間だけでいい、自分をゆだねて、
       自由に生きてみるつもりはないの。」
カリギュラ「もう何年も前から、自由に生きる訓練をしている。」
セゾニア 「そういう意味じゃないの、私の言うことをよく聞いて。純粋な心で生き、
       そして愛する。それはとてもいいことかもしれないのよ。」


セゾニア 「いらっしゃい。私のそばに。横になって、頭を膝にのせて。」


カリギュラ「愛の大盤振る舞いじゃないか。おれたちにはこんな習慣はなかった。」


セゾニア 「私はもう年をとったし、すぐに醜くなる。
       でもあなたを気遣っているうちに、心がこんなにひろくなったわ。」


カリギュラ「おまえはやがて年老いる。その年寄女のために、
       おれは一種の恥ずかしい優しさを、心ならずも覚えてしまう。」
セゾニア 「私をそばに置いてくれるというの!」
カリギュラ「わからない。おれには、この上なく恐ろしい意識だけがある、
       この恥ずかしい優しさは人生がおれにたったひとつ与えてくれた、
       純粋な気持ちという意識だ。」


カリギュラ「最後の証人は、消えた方がいいんじゃないのか。」
セゾニア 「もういいの。嬉しいわ、あなたが言ってくれたこと。
       でもどうしてこの幸福を分かち合えないのかしら、あなたと。」
カリギュラ「おれが幸福ではないと誰が言った。」
セゾニア 「幸福は惜しみなく与えるもの。破壊を糧にはしないわ。」
カリギュラ「じゃあ、ニ種類の幸福があるってわけだ。
       おれは殺人者の幸福を選んだ。
       それは、今、おれは幸福だからだ。
       おれはかつて、苦悩の極みに達したと思った時がある。
       ところがどうだ、もっと先へ行ける。
       この国の果てにあるのは、不毛な素晴らしい幸福だ。」


カリギュラ「セゾニア。おまえは実に奇妙な悲劇に最後までつきあってくれた。
       今や、おまえのために、幕を下ろす時だ。」
セゾニア 「これが幸福?この恐ろしい自由が?」
カリギュラ「そうだ。セゾニア。この自由がなかったら、
       おれは満ち足りた男になっていただろう。この自由のおかげで、
       おれは神のように見通す孤独な男の眼を獲得した。
       おれは生き、おれは殺し、破壊者の狂乱した権力を行使する。
       それを前にしては、創造者の権力など猿芝居に見える。
       幸福であるとは、こういうことだ。幸福とは、これだ。
       この耐えがたい開放感、あらゆるものへの軽蔑、おれのまわりの血、
       憎しみ、自分の人生を眼下に支配している男の比類なき孤立、
       罰を受けない暗殺者の常軌を逸した悦び、
       人間の命を砕く情け容赦のないこの論理、
       おまえの命を砕く論理でもある、セゾニア。
       そしてついに、欲しくてたまらない永遠の孤独を完成させるんだ!」
セゾニア 「カイユス。」
カリギュラ「優しさはごめんだ。けりをつけなくてはならない。
       もう時間がない、愛しいセゾニア!」