風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

偶然の音楽 感想

東京にいた間、天気が良くてよかったです。
「偶然の音楽」観て来ました!
19日、14時からの公演です。感想を書こうと思いますが、
1回しか見てないし、記憶が曖昧で(台詞は正確ではないと思います)
かつよく考えがまとまっていないし、
小栗くん、好き好きフィルターがかかって観ていますので、どうか広い心で(笑)。
ではネタバレになりますので、読みたい方だけお願いします。













偶然の音楽        原作 ポール・オースター
                演出  白井晃
                ジム・ナッシュ   仲村トオル
                ジャック・ポッツィ 小栗旬
                世田谷パブリックシアター


はじまりは降り注ぐピアノの音
石畳のような冷たい床
モノトーンの照明の中、ナッシュが語る過去
人影が淡々と通り過ぎ、時間も通り過ぎる
転がりこんできたポッツィ
自信満々に、煙草の煙をくゆらせながら、カードをきる手
文句をいいながらも、ひとなつっこく、いたずらっぽい笑顔
縋りつくように、訴えかけるその瞳
ときには新しいおもちゃを与えられた子供のように
嬉々として娼婦と戯れる、そして美しい背中
傷ついて、ボロボロになって、担ぎ上げられる長い足
単純で、短絡的で、饒舌で、お調子者で、
わめいて、さげすんで、絶望して・・・
でもその高い背のポッツィは、とてもとても可愛くて愛しい
失いたくないものの全てのように、
心に刻まれました。


舞台がせり出しているせいで、思ったより前の方の席でした。
それが最初に小栗くんが現れた時に、ちょっと小栗くんとは思えなかったんですよね。
そのいつもの彼らしい仕草が、すでにポッツィになっていて、
ポーカーの天才といえども、安っぽいチンピラのような、
落ち着きのない、煙草がよく似合うやんちゃな若者っていう感じでした。
彼はいつも抗っていました。
運命を静かに受け入れようとする仲村さん演じるナッシュとは、
相反するもののように、それがとても痛々しかった。
ポーカーに負けたばっかりに、監禁生活のような時間を強いられる二人。
開放されるには、ただただ重い大きな石を積み上げなくてはならない。
それがあまりにも理不尽な行為なので、みかねてナッシュが、
「借金は全部自分が背負う、お前は自由なんだ」という場面があるんですが、
ちょうどその時、小栗くん演じるポッツィが舞台下に下りてきていて、
一番近くで、その表情を観ることが出来たんですが、
「バッカだなあ。本当に俺があんたを置いていくと思ったのか?
あんなもの一人でやったら、心臓発作起こして死んじまうぜ」
その台詞を言ったときの、優しい、人のいい、少し悪戯っぽい笑顔が、
とてもとても綺麗で、本当に胸締め付けられる思いでした。
出口の見えない毎日でも、少し光が見えてきて、
娼婦を呼んで、パーティを開いた日がありました。
この劇は本当に小説の雰囲気そのままの舞台で、どこか退廃的だったんですが、
ときどき笑いが起こっていました。
この場面も、ポッツィが大ぼら吹いて、
「俺達は凄い仕事を任された建築家なんだ」という台詞とか、
それに対して、気のなさそうなナッシュの相槌に、笑いが起こったり。
そして、小栗くん演じるポッツィは本当に嬉しそうに、
その可憐な娼婦(山田麻衣子さん細い)を、
お姫様だっこ!で、抱き上げてなだれこむように、二人戯れて、
とてもとても可愛かったです。
その宴の後、投げ出されるように横たわる彼の美しい背中。
そして可愛いお尻も少し(笑)。
でもその向こうでは、見えたはずの光がまた閉ざされていく事実を、
聞かされているナッシュがいました。
もう今度こそ、ポッツィには絶えられないと、彼だけを逃がそうとするナッシュ。
小説を読んでいて、凄く印象に残っていた場面です。
最初は自分だけ逃げるのは嫌だと言っていたポッツィでしたが、
やはり決心して、金網の外へ出ます。
その時、煙草を吸って、それをまた手渡して、という場面があって、
「100も数えないうちに、あんたは俺のことなんか忘れるよ」
と言って、駆け出していくポッツィ。それが、
「あんたのことは、ずっと忘れないよ」としか聞こえなくて、凄く切なかった。
軽やかすぎて、刹那な、でも大切で大切で、失いたくなくて・・・
しかし無残な状態で彼は戻ってきてしまいます。
そして時は流れ、結局開放されたのに、車に乗り、向かってくるヘッドライトに、
なおもアクセルを踏み込むナッシュ。
そこで、舞台はまた最初の場面に戻るんです。
まるで、今のは夢物語のように、あんなに守りたかったポッツィは、
実は自分の分身だったのか。少しの狂気と、少しの寓話と、
虚しさと哀しさと、空っぽなのに、満たされていくような、不思議な感覚でした。
仲村さんも、泰然として、静かな感じで、落ち着いた声で、
小栗くんは相変わらずスラっと背が高くて、
着替えるシーンが二度ほどあったんですが、
ほどよく筋肉がついた美しい青年の身体で、よく声もとおっていて、
でも私は静かにささやくように発せられる声の方が、甘くて好きでした。
舞台はシンプルな舞台装置と、照明が素晴らしかったです。
カーテンコール一度目は、皆と揃ってお辞儀をするいつもの小栗くん、
二度目は清々しいほどの笑顔が、優しくて、可愛い小栗くん、
そして三度目は、舞台の袖に入る間際まで、バンザイをするように、大きく手をふる、
やっぱり可愛い可愛い小栗くんでした。
本当に彼は演じることが好きなんだなあって、伝わってくるような、
生き生きとした魅力的な、でも儚いポッツィでした。