風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

破滅へ向かう物語

暑い日が続きます。
東海地区での「救命病棟24時」は、再放送はなさそうですね。
気長に待ちます(笑)。
そういえば、「救命〜」で共演した仲村トオルさんが、
「偶然の音楽」でナッシュ役をどうかと、言われていたときに、
すでにポッツィ役は小栗旬くんという俳優さんに決まっていますと、聞いていて、
「救命〜」での顔合わせで、小栗くんを見て、
「いいな、やろうかな!」って思ったって仰ってましたよね。
なんだか嬉しかったです。
「偶然の音楽」の舞台は、狂気も孕んで、寓話的で、
そしてスタイリッシュな舞台でした。
小栗くんのジャック・ポッツィを思い出すと、胸がいっぱいになってしまいます。
破滅へ向かう物語に、美しい男の子は、それは魅力的でした。
短絡的で、自信家で、饒舌で、煙草の煙をくゆらせながら、
わめいて、抗って、ほんの少しの希望に縋るように、
なのに無残な姿で戻ってきた彼。
その背の高い華奢な男の子は、すごく愛しくて、そして儚かった。
劇評に、「登場人物の中でただひとり、
口から出る言葉と考えの間に隔たりのない素直なジャックを、
小栗が跳ねるような生命力で演じたことで、
その最期が余計に切なかった。」と書かれていて、
本当にそのとおりだなあって思いました。


“その夜以降、ポッツィのことをもっと気をつけて見守ってやらねばと、
ナッシュは思うようになった。もう心の余裕がすっかりなくなっている。
「それまでは何もかも調和していたんだ。
何もかも俺たちにとって音楽に変わるってところまで来ていたんだ!」
・・・・・・・
「いいから行け」とナッシュは言って、いきなり金網を苛立たしげに揺すった。
「あんたが百も数えないうちに、俺が誰かも忘れてるだろうよ」
それから、さよならの言葉も言わずに、ポッツィはくるりと回れ右して、
道路を走っていった。” (ポール・オースター 偶然の音楽より)