風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

博士の愛した数式

今日は暖かいですね。
たまには本も読まなければいけないかなって、
息子が最近買ってきた「博士の愛した数式」を読みました。
もうすぐ映画も公開されますね。
とてもとても優しさ溢れる温かい気持ちになれる本でした。
何でもない場面で胸がいっぱいになって涙が出てきます。
数学って、ロマンチックなんだなあって思います。
では、ここからは内容に触れるので、読みたい方だけお願いします。












博士の愛した数式」      小川洋子


博士は事故が原因で、記憶が80分しかもちません。
そこへ「私」こと家政婦がやってきます。
彼女には10歳の子供がいました。博士から頭の形にちなんで、
ルート(√)と名づけられます。
この三人で物語は綴られていくんですが、
それぞれがまず自分の立場をきちんと受け入れて、
かつ、相手に対して優しいんですね。ルートくんもとても思いやりがあるいい子です。
博士は80分ごとに、愛すべき「私」と「ルート」と出会って、
博士の愛した数学のことを心をこめて、彼らに教えます。
この数字に関しての話が数学が苦手な私でも、とても興味を引きました。
本当に神さまが作られた手帳を覗き見しているようなわくわく感と、
数学って美しいんだなあって、惹きこまれました。
素数友愛数三角数完全数・・・
彼らに起きる小さな出来事のたびに、その数字に関する話が出てきて、
博士がどんなに数学を愛しているのか、
そして、問題を解くように、真実は大切なことはひとつだと、導かれます。
彼女は外へ出ると白い目で見られがちな(記憶をたどるため、
背広にたくさんメモ用紙をくっつけて歩いているので)
博士の良さを充分理解して、愛情、友情ともいえるような、
まさに二人の出会いの友愛数のように、博士を大切に優しく見守ります。
博士も彼女の優しさに、心溶かして、慈しみます。
そして、ルートへの博士の愛情がそれはそれは深くて、
ルートが問題を解けたときの絶賛の仕方とか、とても微笑ましく読みました。
ルートも子供らしく、博士の愛情に、素直にそして驚くほどのきめ細やかさで、
答えます。ここは彼女の子供だからかなあって思いました。
博士は80分ごとに彼女とルートに恋してたんじゃないかなって思います。
恋というと語弊があるけど、毎回毎回彼女たちを、
愛しい、大切にしたいと思えたことは、
それはそれですごく幸せなことだったんじゃないでしょうか。
ルートが数学の先生になるって決まって、
博士の胸の江夏のカード(彼女とルートのプレゼント!)が、揺れていて、
博士とルートがキャッチボールをする最後のところで、涙が止まりませんでした。
可哀想な涙じゃないんですよ。幸せな涙です。
積み上げる時間がなくても、穏やかに優しく心が通じ合えて、
純粋に人を大切に思う気持ちに、心打たれました。
彼らの日々の生活が淡々と丁寧に美しく書かれていて、
とても温かい素敵な物語だなあって思いました。