風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

どこか甘美なところがある

昨日の夜中、大雨が降ったのですが、すっかり晴れました。
そして暑いです。
暑いと頭が回りませんよね(いつも回りませんが・笑)。
そんなときは、簡単に読める詩をパラパラめくったりしています。
そういえば先日、映画「人間失格」の制作発表の記事を読んで、
中原中也も出るんですね。原作には出てこなかったと思うのですが。
中原中也、好きな詩人です。リズムが軽やかで、
青い部分がずっと残っていて、ロマンチックな部分もあります。
誰かさんと似ていますね(笑)。
小栗くんは、インタビューなどを読むと、結構論理的なのですが、
途中で放り投げちゃうようなところもあって(笑)、そこも好きなんですよね。
それからやっぱり演技が、どこかロマンチックなところがあると思うのです。
少し浮世離れしているというか、だから、クラシックなもの、時代劇など、
そこになんなく息づくことが出来るのかなって思います。
あの7話(限定・笑)の林誠司、
リアルで、恐ろしくて、迫力があったのですが、
その一方で、どこか甘美なところがある。
彼の孤独、悲しさ、とても繊細な気持ちが、
そんな台詞はひと言もなかったのに、すごく伝わってきました。
蜷川さんの「悪そうでオシャレでかっこいい。叙情もある。」
三池さんの「どこかで切ない感じもある」にあるように、
そういうところが活かされた役がいいなあと思います。
明治時代、大正時代も、きっと似合いますよね。
では中原中也の詩をふたつ、書いてみます。
青い部分、ロマンチックな部分がなんとなく伝わってくるかな(笑)。





逝く夏の歌          中原中也


並木の梢が深く息を吸って、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を、
歩み来た旅人はあわてて見付けた。


山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗っておいた。


風はリボンを空に送り、
私は嘗て陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。


騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿いの道を乗手もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。





湖上             中原中也


ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。


沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂る水の音は
ちかしいものに聞こえませう、
ーあなたの言葉の杜切れ間を。


月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われらくちづけする時に
月は頭上にあるでせう。


あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言や、
洩らさず私は聴くでせう、
ーけれど漕ぐ手はやめないで。


ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。