風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

スタンディングで演技を賛美されたエアロン

爽やかに晴れました。
昨日、再演の「ムサシ」をご覧になられた方からメールを、
いただきまして(ありがとうございます)、再演の様子を教えていただきました。
随分、小次郎は雰囲気が違うようですね。
そして私が何より気になっていた、平心さんのあの台詞(笑)。
「そういえば小次郎どのは、ばかにご様子がおよろしい。」は、
なかったそうです。やはり美剣士、小栗小次郎用の台詞だったんですね(笑)。
スケジュールの都合で仕方ないですが、小栗くんに、
ロンドン、NY公演へ行ってほしかったな〜と思います。海外公演といえば、
この頃、自分で作った小栗くんのファイルをよく見ているのですが、
「タイタス・アンドロニカス」イギリス公演の様子を伝えるさい芸の「シアター通信」を、
また改めて読んでみました。ここに書き出してみますね。


2006年6月16日、ロイヤル・シェイクスピア・シアターは、興奮に包まれていた。彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督である蜷川幸雄演出のプロダクション「タイタス・アンドロニカス」の、イギリスでの初日が行なわれたのだ。観客や出演者たちの生の声を交え、素晴らしい一夜をリポートする。


「これは衰退する帝国を描いた、輝きを放つ哀調を帯びたプロダクションだ」
(ガーディアン紙)
スタンディングオベーションを受けて当然の作品だ」(ストラトフォード・ヘラルド紙)
「ニナガワによって蘇ったこの作品は、現代においても、残酷で危険な世界が脈々と続いていることを、私たちに知らしめる」(ザ・タイムズ紙)


「タイタス・アンドロニカス」のイギリス公演初日が終わったとき、誰もがその成功を確信したに違いない。熱心な拍手、観客の一人一人が自らの意思を示すスタンディングオベーション・・・そして、劇中を包み込むなんとも言えない興奮と熱気。作り手と受け手の気持ちが一体となって、初めて作品が完成する瞬間に立ち会った喜びで、それは生み出されたものだ。
今回の公演は、シェイクスピアを中心に上演する劇団として活動するロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)が、今年1年間をかけて、シェイクスピアの全作品を上演する、「ザ・コンプリート・ワークス」に招聘されたものだ。2004年に彩の国さいたま芸術劇場で初演した「タイタス・アンドロニカス」を、今年4月に同劇場で再演、地方公演を経てこの日を迎えたもので、RSCの上演を始め、欧米の作品が並ぶ中で唯一上演される日本の作品だ。
かつて「リア王」や「ペリクリーズ」を始めイギリスの公演を多く経験してきている蜷川にとっても、RSCのこのプログラムの中での上演に対しては、特別な思い入れがあったようだ。日本的な演出に頼らず、日本語による上演(英語の字幕付き)、シェイクスピア作品の中でも上演されることの少ない演目という、難しい条件下での挑戦だった。
初日の観客たちの反応は、舞台が始まったばかりの段階では、素早いものではなかった。物語自体が広く知られたものでないため、字幕を追うのに忙しかったためもあるだろう。しかし復讐の図式が明らかになるにつれ、観客の集中力がどんどん高まるのが手に取るようにわかった。盛大な拍手が起こった一幕の終わりを経て、二幕には凄惨な話の中でありながら、笑いも起き、フィナーレまで舞台も客席も緊張感は途切れなかった。そして割れるような拍手、観客の感動はもちろん、演じた側にもストレートに伝わった。


力強く、けれど人としての弱さを併せ持つ複雑なタイタス像を演じきった吉田鋼太郎は言う。
「前半は無我夢中でしたが、途中からお客さんの手ごたえを感じました。最後は本当のスタンディングオベーションをいただくことができて、夢がかないました」
カーテンコールで、多くの人からスタンディングで演技を賛美された、エアロン役の小栗旬も、「もう鳥肌がたちました。とにかく楽しかったです」と嬉しさを隠さない。
シェイクスピア作品の見上手が多い観客は的確な言葉で、この作品を評してくれた。
「演劇の長い伝統のある日本が、シェイクスピア作品に、新しい解釈を与えてくれた」
「ビジュアルの表現が素晴らしい」
その夜、蜷川は関係各者を前に静かに、けれど感動を添えてこう言った。
「今日の公演の演出家であったことが僕は嬉しい」
すでに前日の舞台稽古の時から、確かな手ごたえを感じていたという蜷川に対し、この夜を経験した誰もが、今日の観客であったことを感謝しただろう。


なにより蜷川さんの言葉、「今日の公演の演出家であったことが僕は嬉しい」、
この言葉がすべてを語っていて、胸がいっぱいになります。心に響きますよね。
そしてそういう公演の舞台に小栗くんが立っていたこと、誇らしく思います。
小栗くんの初々しい喜びを隠せない言葉も、よかったなあって思いますし、
今回「ムサシ」では行けませんでしたが、2006年23歳のときに、
イギリス公演を経験できたことはとても大きいと思います。
蜷川さんがこの公演は、「歌舞伎座へ外国の劇団が来て,
勧進帳をやるようなもの」と仰っていましたが、
シェイクスピア作品を本場で上演したということは、本当に凄いことですよね。
鋼太郎さんの「夢がかないました」という言葉も、
シェイクスピア俳優と呼ばれる鋼太郎さんにとって、
凄く嬉しかったんだろうなあと、思いが伝わってきます。
また海外の舞台に立ってほしいですね〜。
その前に日本の舞台に立ってもらわなくては(笑)。
舞台という非現実の空間の中で、
瞬時に消えていく、しかし心に鮮やかに刻み込まれる彼を
選ばれたものだけが持つオーラを背に、美しく駆け巡る彼を、
また観て、感じたいです。
そういえばカーテンコールでの胸に手をあてたお辞儀、
もう何年も見ていないですよね。小次郎はこのお辞儀ではなかったので。
あのお辞儀、とてもとても好きでした。
そのときのたとえばオーランドーに、カリギュラに、そして小栗くんに、
素敵な世界に連れて行ってくれた感謝の思いと、
もう夢から醒めるんだという寂しさと、でも感動した嬉しさと、
あのお辞儀を見ると、苦しいくらい、心が、胸がいっぱいになります。
小栗くんの舞台、待っています。


「タイタス・アンドロニカス」はどんどん進化していった舞台だったので、
収録日が公演の最初の方だったのが残念ですが、
「タイタス・アンドロニカス」が収録されているDVDです。
「間違いの喜劇」も収録されています。

【 amazon.co.jp NINAGAWA×SHAKESPEARE III 】