風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

蜷川幸雄の稽古場から 感想

秋晴れです。
まず鈴木教授、根岸教授、ノーベル化学賞、おめでとうございます!
久々の明るい話題、嬉しいですね。日本人として誇らしいです。
三日月さんから教えていただきました(ありがとうございます)。
獣医ドリトル」の主題歌に参加される佐藤竹善さん、
ブログでそのことについて書かれています。

【 佐藤竹善さんのブログ 】

石田三成、見てくださっていたんですね。嬉しいです。
佐橋さんは松さんの旦那様なんですね。素敵な皆さんに参加していただいて、
主題歌、ますます期待大です。


そして「蜷川幸雄の稽古場から」、昨日の夕方、届きました。

【 amazon.co.jp 蜷川幸雄の稽古場から 】

早速読みました。全部は読んでいないのですが、10人のうち、
小栗くん、勝地くん、杏ちゃん、成宮くん、長谷川くん、藤原くん、
そして蜷川さんのページ。木俣さんの取材ノート、
訳者、松岡和子さんのページ。蜷川語録(写真・蜷川実花さん)を読みました。
写真としては、小栗くんは「カリギュラ」のときの1ページと、
小栗くんのインタビューページに、小さくモノクロで、
「間違いの喜劇」「タイタス・アンドロニカス」等の写真が載っています。
読んでみて、改めて思ったことは、やはり蜷川さん、
凄いなあ、素晴らしいなあということです。
まずものすごくきちんと人間に向かっている感じがします。
深く真っ直ぐに、ときに厳しく、ときに自由に。
そして知的で、常に疾走していくのですが、まわりのものを、
その風で吹き飛ばすような、そういう疾走の仕方ではないんですよね。
とても細やかに繊細に、小さな芽をひとつ残らず育てようと、
大きな愛とエネルギーとともに、疾走しているなあと思いました。
こういう方に見出されたことは、本当に本当に幸せなことだったと思います。
ではここからは内容に触れますので、読みたい方だけお願いします。




蜷川幸雄の稽古場から


最初に小栗くんのインタビューを読みました。
ハムレット」「お気に召すまま」「間違いの喜劇」
「タイタス・アンドロニカス」「カリギュラ」「ムサシ」について、
順に語られています。雑誌で読んだことのある内容もありますし、
初めて聞いたこともありました。
ちょっと驚いたのは、「お気に召すまま」再演を、一度断っていたこと。
再演より新作をやりたいという気持ちからだそうですが、
でも蜷川さんが、そのとき撮っていた「キサラギ」の現場まで、
わざわざ来てくださって、小栗くんを説得されたそうです。
それで蜷川さんを囲んで、「キサラギ」の皆と写真を撮ったりして。
そのときの写真が、香川さんが連載されている「日本魅録」に、
掲載されたあの写真だったのですね。
何故こんなところに蜷川さんがって思っていたので謎が解けました。
それにしても、オーランドーをもう一度演じてくれて、
本当によかったです。
それから「間違いの喜劇」のときからの、蜷川さんと小栗くんの、
丁々発止についての話とか、
「芸能の世界は決して華やかなものではなく、小さな町工場と一緒です。
 みんなで作品という、ひとつの製品をコツコツ作っているんです。」という、
蜷川さんの言葉に、小栗くんは「すごく気持ちよかった」と話していて、
その小栗くんの言葉もよかったし、わかる、わかるって思いました(笑)。
最後は、
「出会ったときから、おまえはこんなところにいる人間じゃないんだって、
 励まし続けてくれたのは蜷川さんだから、いつまでもそうやって僕を、
 煽り続けてほしいんですよ。」と結ばれています。
勝地くんのインタビューは、勝地くんらしい語り口で、
カリギュラ」のとき、蜷川さんが、小栗くんがあげた洋服を着て、
「これ、小栗からもらったんだよ」と嬉しそうにしていたこととか、
例の年末の出し物の話とか、楽しかったです。
次に、鈴木杏ちゃんのインタビューは、読んだ6人の中で、
一番、面白く読みました。印象的な言葉をあげてみますね。
蜷川さんの言葉です。
「強くダメを出されたからって殻を閉ざしたり、バリアを張ったりするなよ。
 この場では何をやったっていいじゃないか。ものを作っていく過程では、
 時には全否定されたっていいじゃないか。大事なのはひとりで完結しないこと。
 それが演劇なんだよ。」
ここからは杏ちゃんの言葉。小栗くんについても話してくれています。
若手俳優の中で、一番蜷川さんに切り返せるのは、旬君ですね。」
「定期的に蜷川さんのそばにいないといけない気がするんです。
 なぜなら、『カリギュラ』の旬君を見たときに、ビックリしたんですよ。
 以前から知っていた旬君が、一気に高みへと駆け上がっていったとき、
 これは、性別は違っても同世代の俳優として、ヤバいな、負けられないって、
 思います。そして、その成長した旬君のそばに蜷川さんがいるんですよ。
 蜷川さんといると、一歩ステップが上がれるような気がするんですよね。」
杏ちゃんはよく怒鳴られた話をしていて。
「私は、怒鳴られたことがある人とない人では、
 何かが違うような気がしているんです。例えば、下積みということも同じで、
 下積みをした人としてない人では違う気がします。
 旬君のように脇役からスタートして主役になった人と、
 いきなりドラマで主役をやった人とは、芝居に違いがある気がします。」
こうやって、他の俳優さんから、語られることは、あまりないような気がするので、
特に、「カリギュラ」での小栗くんについて、こういうふうに思っていてくれたことは、
とても嬉しかったです。本当に、そこには蜷川さんがいて、
定期的に蜷川さんのそばにいないといけないですよね(小栗くんもです!笑)。
成宮くんは、とても正直に「お気に召すまま」初演の様子等が語られていて、
長谷川さんも、「カリギュラ」の台詞を用いながら、蜷川さんとの距離感が、
語られていて、興味深かったです。
藤原くんは、ときどき小栗くんのことが出てきたり、
本当に、一から蜷川さんに育てられた様子がよくわかります。
「熟した(完成した)ものに蜷川さんは興味がなくて、果物で言えば、
その前の蒼くてまだ固いくらいの芝居が好きなのだそうです。」
こんな一節も出ていて、私もそうだわって思いました(笑)。


そして蜷川さんのインタビュー。印象的な言葉を。
スターについて。
集中力が必要。「他の人ではここまで到達できない」と感じさせる何か。
他者の欲望の多層化された組織者。努力。
ぼくは複雑な人が面白いんだ。
演劇って、「たかが芸能」と言っていいと思うんだ。
若い頃は特に、美形であるとか肉体的な魅力とかそうしたところから、
スタートしてやがて良い俳優になる。
まあ「芸能です」と言っていながら凄いのが、ぼくは好きでね。
主役というのは、大勢出ているものたちの思いを語っている人。
みんなの思いを代表して語る人だと思う。
技術的にも、見た目・・・背丈や顔の良さも必要だしね。
そして多くの人々の眼差しに応えるためには、絶対的にうまくないといけない。
描写ができることが大事だ。
現在の自分から、立場とか権力とか、持っているいろいろなものを、
マイナスしていって、それでも残るものは何か?自分の存在、
本当の自分の価値を厳密に引き算していったら何が残るのかということについて、
真摯に問いたいと思ってます。
年上で権威があるという自分を、自分で崩して、
「同じ地面に立っているんだ」と言い続けて、納得してもらわないと、
自由にならないよね。


スターの条件はとても頷けるものだし、小栗くんと重なる部分も、
たくさんありますよね。
そして年を重ねると、どうしても自分にいろいろと足そう、足そうとするのに、
蜷川さんは引き算していくんだなあと、その覚悟が素晴らしいなあと思いました。
「稽古場から」〜ということで、披露する舞台よりも、
人間と人間との出会いと、それからというか、
台詞よりも、その先にあるもの、例えば少し外れた人、俳優に対しても、
その真剣な愛情、暖かさ、優しさが、たくさん伝わってきました。


若い俳優たちへ。小栗くんへの言葉。
小栗君は才能のあるいい俳優です。でもいい作品を選んでないと思ってます。
もったいない。漫画ばかり読んでることは別に自慢することじゃないぜ。
可能性を信じて、もっと先へ先へ。


小栗くんへの言葉は、10人の中で、一番少ない文字数でしたが(笑)、
なんとなくですが、一番、この本を読む人を意識せず、ストレートに小栗くんへ、
届いてほしいと、蜷川さんが仰った言葉かなと思いました。
本当に全く全く同感です!俳優さんなんですから、もっと本を読んで、
シェイクスピアとか、チェーホフとか、蜷川さんと対等に話せるように、
なってほしいです。そして自分の可能性を、小栗くん自身がちゃんと信じてあげて、
先へ、先へ行ってほしいです。
それからこの6人を読んでみて、他の人たちと比べると、
まだ小栗くんには少し余裕を感じます(笑)。
もっと皆は、這いずり回って、蜷川さんについていっています。
どうかまたそういう役を小栗くんに準備してください。
また高みへ登らせてください。
そしてその成長した小栗くんのそばに、蜷川さんがいてください。
そんな思いを強く強くした一冊でした。
最後に「蜷川語録」から。


日常生活でいろいろな、
リスクを背負っていることが、演技の上で
花となって開く人もいる。
良い人であることは、
良い演技ができることを保証しない。


本人も気づいていない、
その役者の新しい自分像を発見する、
手助けをしたい。