風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

時計じかけのオレンジ その2

晴れました。風が強いです。
ゆまさんから教えていただきました(ありがとうございます)。
上地春奈さんのブログ、「時計じかけのオレンジ」について、
書かれています。

【 上地春奈さんのブログ 時計じかけのオレンジ 終了 】

気持ち、伝わってきますね〜。小栗くん、お稽古に付き合ってあげたんですね。
本当に素晴らしい、いいカンパニーだったんですね。

【 上地春奈さんのブログ 時計じかけのオレンジ 続き 】

アレックスとマーティーの写真、ありますよ。もう胸がいっぱいになります(笑)。


では、昨日の続きを書きますね。
舞台の様子を思いだすのを、お友達に、
少し手伝っていただきました(笑)。ありがとうございます。


時計じかけのオレンジ


休憩時間が終わり、なおも続く治療。
アレックス「なぜ彼に罰を与えるの?」
ブラノム 「きっとこの治療中流れていた曲のことを言っているのだと思います」
苦しみとともにずっと流れていた第九、とても好きだった第九だったのに。
成功を確信した悪魔的なブロドスキー博士が恐いです。
マネキンも民衆の一部になっている公開場。
これからロドビコ療法がどんな成果を見せたのか、
発表会が行われます。
おどおどしたアレックス登場。まずアフロヘアの男性が近づき、
わざと靴を踏んだり、無理やりキスをします。
小栗くん、男性とのキス、多いですよね(笑)。
オールメール・シリーズは当然なのですが、「タイタス」のときも、
企てた悪事を喜ばれて、思わず男性にキスされていますし、
舞台はキスシーン多いです(笑)。
ここからはショータイムのように、アレックスは扱われ、
アレックス自身が怒りを覚えたり、欲望を感じたりすると、
身体が拒否反応を覚えて、吐いてしまい、その様子を、
楽しげに見る民衆たち。
妖艶に踊る美しい半裸の女性に、
「君の靴が汚れないように、僕の服を敷いてあげる・・・」等、
苦しい身体で這いずるように縋るように言う場面は、哀れで、
当然、アレックスは酷いことを散々してきたのだけれど、
さすがに可哀想に思えます。
細い身体、長い手足は床にうつぶせたまま、
握った長い指が苦しさをにじませます。
民衆のひとりであったあの牧師が、「これでは彼はもはや人間ではない。
彼には何も選択できない。愛することも」と訴えますが、
「愛?愛?」という民衆の可笑しな踊りから、
「夢にまで見た自由、自由」という歌へ続きます。
このあたりは、空恐ろしい感じです。
機械にされたアレックス、しかし民衆も答えがひとつだけの機械のよう。
アレックスの治療は成功した!新聞に報道されます。
ある冬の日。
家に戻ってくるアレックス。このアレックスがですね。
赤いマフラーをして、グレーのハーフコートを着て、
本当に上品で、可愛らしい男の子なんです。
銀髪を揺らし、寒そうに走ってやってくるところがまた可愛いです。
母親を見つけ、「マム!」と言って抱きつくアレックス。
とても可愛い。
でも母親は及び腰。ジョーというわけのわからない輩と一緒。
ジョーは特徴的で、ちょっとオカマのよう(笑)。
武田さんが演じていますが、武田さんは、作家アレキサンダー役、
囚人でも出てきて、のちのドルーグでも出てきますので、
そのたびに雰囲気が変わって、七変化のようです。
ジョーには敵視され、次に登場した父親からも母親からも受け入れられず、
もうどこにも帰るところのない傷心のアレックス。
すると一番最初に暴行した老いた男が現れます。
ハッと気付くアレックス。先に「人違いです」
「人違いって誰と誰の」
身体が拒否反応を起こすので、やられるだけのアレックス。
仲間の浮浪者たちも加わって、袋叩きにします。
すると警官が来て、助かったと思ったのもつかの間、
その警官たちは、なんと昔仲間だったドルーグたち。
アレックスとわかって、待ってましたとばかり、
彼の銀色の髪をなで、その後痛めつけます。
ゴミ置き場に突き飛ばされ、ゴミの中のスパゲティを、
美味しいランチの時間と言い、口に詰め込まれたり、
引きずり回され、殴られる。
赤いマフラーは外れて、ただただ、いいようにされてしまいます。
舞台ではもちろん本当に殴っていないので、
小栗くんが自分で飛ばされるように、アクションをしますが、
長い手足が映えるので、派手にやられているように見えます。
どこか色っぽい雰囲気もあります。
しかし哀れで、みじめで、可哀想なアレックス。
いつのまにか、雨が降り出します。
LEDに光る、降り注ぐ冷たい雨・・・。
倒れた身体をゆっくり仰向け、
この身をあざけるように、乾いたアレックスの笑い声。
しばらくして、足を引きずった老人が、彼を部屋に運んでくれます。
優しくタオルで身体を拭いてくれる老人。
ベッドはないんだという老人。マットに横たわるアレックス。
アレックスの細い身体は、マットに沈みこみ、
消え入るような声で「ありがとうございます。あなたに神のご加護を」
老人はあの新聞に載った青年と知る。
彼は政治活動をしている。今日は水曜集会、仲間が訪れる。
その仲間は言う「君の望みをかなえてあげるよ」
アレックスは信じられない様子、しかし政治の道具として、
扱われることに気づき、ついナッドサット語が口から出てしまう。
その言葉を聞いて、青ざめる老人。
この老人こそが、あの妻を凌辱され、暴行の限りを尽くされた、
作家アレキサンダーだった。
ここからはそれがもとで妻が死んだこと、その許せない思いを、
切々とアレキサンダーが歌います。
苦しく身体をよじり、のたうちまわるアレックス。
もう逃れられない、残された道はひとつ。
耳をつんざく不協和音。身を投げるアレックス。
何もない暗闇、音の余韻に空気が震える・・・。
ほどなく明かりがつき、ブラノムと担当医が話し合う。
アレックスは一命をとりとめた。意識が戻るのを待つ。
アレックス、意識が戻り、早速傍についていたナースを誘惑。
ブラノムがテストをしてなおわかる、完全にもとの邪悪なアレックス降臨。
包帯ぐるぐる巻きはちょっと可愛い。
でも瞳には悪の炎が燃えて、恐ろしさが蘇る。
内務大臣が、手のひらを返したように、媚を売り、
政治に利用しようと、アレックスに取り入る。
「彼は治ったわ」
「この青い地球をズタズタにするんだ」
内務大臣から贈られた極楽鳥花が飾られ、
大きなスピーカーから流れる大音響の音楽は、
もちろんベートーヴェンの第九!
彼の邪悪な笑顔とともに、圧倒的な力で、
音楽の渦に飲み込まれていきます。
暗転。
白い幕から、スポットライトを浴び、アレックスひとり登場。
夢のように幻のように美しい彼。
拍手に包まれながら、左手を舞うように上げ、
深く膝を曲げ腰を折る、美しいお辞儀。
細くて長い人差し指が唇に当てられ、会場は静まる。
「シーンは続く」
彼の一声で、また幕が開く。
オープニングのシーン、ふたたび。
4人のドルーグ。小栗アレックスの他には、
武田さん、橋本さん、山内さん。とっても楽しそう(笑)。
でもアレックスは下手の端の椅子に座って、物憂げ。
何故かアレックスが一番年上のようで(笑)、
遊ぼうとするのだが、断るアレックス。しぶしぶひきさがる三人。
この後、上手で、帽子をとり、ネクタイをし、上着を着るアレックス。
すぐあの18歳のアレックスが登場するのではなく、
着替えるところを見せることによって、
時間経過を表しているのかなと思いました。
またミルク・バーのシーン。黒髪のアレックス、軽やかに登場。
ソファで彼女を待っている。彼女マーティー、彼の隣に座る。
マーティー「大事な話しがあるんでしょ?」
アレックス「ここからが本題と言っても過言ではない」
マーティー「誰に話しかけてるの?」
はい、ここからが本題なんですね(笑)。
アレックス「あのことは考えてくれた?」
マーティー「まだ早すぎるわ。だって、私が17で、あなたが18でしょう?」
アレックス「・・・」
マーティー「ねぇ、聞いてる?あなた18でしょう?」
アレックス「あ、あ〜そうだ18だよ。この際年齢なんて関係ない、 
       ついでに顔のこともね」
マーティー「顔のことは誰も何も言ってない」
どう見ても、17歳に見えない彼女(笑)、アレックスが言葉に詰まる、
その間がいつも可笑しいです。顔の話も笑いがおきます(笑)。
甘いまなざしのアレックス、昔の面影は微塵もなく、
そして彼はスタンドマイクを持ちながら、楽しげに歌い始める。
スタンドマイクを回す、踊る、指をさす、まるでロックスターのよう。
時計じかけのオレンジになるな」「よく見てそして選択しろ」
「幼きゆえの幼き暴力」「選択することは難しいけれど」
「それがそれこそが、自由の醍醐味」
皆も揃って、大合唱。お祭り騒ぎ、狂喜乱舞。
えー!そうなんだ〜と思いながら、
皆さんのパワーと格好良さに負けちゃいます(笑)。
その熱狂の中、アレックスはひとり前に出て、口上のように。
「ディアー・ブラザーズ、and シスターズ」
「この登場人物とも二度目のお別れだ」
「皆さんの可愛いアレックスは改めてさよならを言うよ」
「一緒に旅に出て、いろんな体験をした。悪いこともね」
「全ては観る者が判断すればいい。選択は自由だ」
音楽だけが鳴り続け、皆はそのまま、やがて下手上手へはけていく。
舞台を包み込むように拍手。
そして華やかなカーテンコールへ。


大千秋楽のときは、上手だったので、その前をはけていくアレックスを見て、
役としてのこれが最後のアレックスの姿だわって、
しっかり胸に留めました。
そして終ると、毎回、熱に浮かされたようになってしまう(笑)。
まずべテランの方々が精一杯力を出し、かつ楽しく遊んでいること。
カンパニー誰ひとり力を抜かない清々しさ。
そこに板の上に立つとこれだけの光を放つの?と、
驚くべき小栗くんの求心力の強さ、そして息を呑む美しさ。
心掴まれる音の洪水に溺れながら、一流のプロとはこういうものという、
本気の仕事を観た感動。
舞台って凄い!また新しい扉が開いた、麻薬のような舞台。
自由とは?権力とは?悪、善、暴力、愛、子供?大人?
あなたの中身は時計じかけではないの?
ひとつの答えしか出さない、ひとつの方向しか見られない、
お堅いネジが巻かれている、機械は入っていないの?
選択の自由は目の前に、皮肉も余裕で受け止めて、
さあ、舞うようにあげられた指先の、
エレガントで美しいお辞儀をする彼のもとに、
彼がいざなってくれるなら、彼の指し示す方向へ、
それが私が選んだ答え、喜んでついていきましょう。
魅力的な見たこともない世界へ、どうぞ連れて行ってください。