風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

メイキング・オブ・間違いの喜劇

晴れました。寒い日が続きます。
今夜、wowow で「間違いの喜劇」が放送されますね。
見られる環境の方、観てみてくださいね。
少し動画も見られます。
【 wowow 間違いの喜劇 蜷川幸雄×小栗旬 】
「間違いの喜劇」は小栗くん、初座長公演でした。
一番最初に目をかけて信じて育ててくださった蜷川さん。
一部の地域で放送された「間違いの喜劇」のメイキング番組がありまして、
私もダビングしていただいて(ありがとうございます)、
それこそDVD化してもいいくらいの素晴らしいドキュメンタリー番組でした。
では今日はその感想をもう一度書いてみようと思います。


メイキング・オブ・間違いの喜劇        蜷川幸雄   小栗旬


約50分ほどの、とても内容の濃い番組でした。
第一に思ったのは、こんなに純粋な空間があるんだということ。
邪心も掛け値もなくて、いかにいいものを作るかに、
その舞台にかかわる全ての人々が、全速力で真摯に向かっていく。
蜷川さんの言葉はいつも本物で、心に響いてきます。
ただ、喜劇ということで、ぴりぴりはしていなくて明るい感じです。
まず、小栗くんは若者特有の言葉のイントネーションを、注意されていました。
蜷川さんから、「テレビってそんなにやさしいんだ」と皮肉られたりもしますが、
「他の人に聞いてごらん」という語尾が優しかったり。
側にいた瑳川哲郎さんが明るい笑顔で、身振り手振りで教えてくださったり、
舞台の片隅にいる小栗くんを、吉田鋼太郎さんが見つけて、
そっと近づいて教えてくださったり。
そのときの小栗くんの吉田さんを見る表情が、少し不安げなでも無垢な目で・・・。
でも本当に彼は、まわりの人たちに愛されて、
大事にされているんだなあって思いました。


パンフレットにもあった、
蜷川「おれは爺やになった気分だよ」
小栗「そうだね、爺や(わざと優しげに)」
蜷川「うっせーやッ」
このシーンは小栗くんは蜷川さんのすぐ隣で、パイプ椅子を揺らせながら、
言っているんですよね〜。後姿なので、表情はよく分からなかったのですが。
大胆というか、なかなかおちゃめでした。


そういえば、蜷川さんが遅刻してきたとき、小栗くんが、
鬼の首でも取ったかのように、大きな声で、笑顔とともに、
「おはようございます!」と言ったことがあって、
蜷川「おめえのおかげで狂ったんだよ」
小栗「何がですか。逆切れ?」というやり取りも(笑)。
この番組を見てると、これが小栗くんのカラーなのか、
末っ子らしい甘えた可愛い部分もあるのですが、
それがべたべたしていないんですよね。
本人がシャイな部分もあるからかもしれないけど、
だから皆に好感を持たれるのかなあって思いました。


走りまわってから、力強い台詞を言うシーンでは、息があがってうまく言えなくて。
蜷川「俺の勝ちだな」
小栗「はい、負けました」
もう一回と食い下がる小栗くんに(悔しさいっぱいの目です)
蜷川「明日にしよう」
小栗「ヤダ!」
蜷川「罵倒のエネルギーがないんだよ。俺の体にはうずまいているわけ、
    ドブみたいに(会見で言ってた言葉「小栗にドブを背負わせる」)
    それが小栗が乗り越えなきゃならない罵倒のエネルギー。
    相手を巨大なものにするってことだな。そこんとこちゃんと勝負しないと、
    世界レベルにいかないって俺は考えてる。
    だから小栗にはそこまでいってほしいわけだ」
その言葉を聞いている小栗くんの表情が、大げさに感激する表情ではなくて、
でも希望の見える嬉しさとともに深く心に届いている感じで、
その顔を見て、私の方が胸がいっぱいになってしまいました。


他に「基礎的なことをやっていないと表現者は長生きしない。
それをやっていないとメディアや、観客に食い荒らされ、捨てられる。
そうならないために、小栗に基礎的栄養を与えてるんだ」とか、
蜷川さんの言葉は本当に本人のためを思った、上っ面ではなく、
深いところへきちんと届く真実の言葉っていう感じがします。
こういう方と一緒に仕事が出来るというのは、それも主役で、
本当に小栗くん、幸せだなあって思いました。


そして小栗くんの言葉。
「今回、蜷川さんが僕に求めたものは、ある種の様式性ということだと、
思うんですよね。今回の「間違いの喜劇」だったり、シェイクスピアの世界の、
様式性というものを身体に叩き込めっていうことから、
スタートしてたんだってことだと思う。それに対して、
自分の中で納得いく状態に至るまでの時間がかかってしまったので、
やっとまだ足りない部分もあると思うけど一応スタートラインに、
立て始めたのかなって感じですね。」
彼はクレバーですよね。ちゃんと核の部分を分かっているなあって思いました。


他にも様式性についての蜷川さんの言葉や、喜劇について、
言葉そのものの大切さ、フリージャズのような即興演出について、
外国に作品を持っていくにあたって、衣装について、舞台装置について、
音楽について、スタッフについて、無名の俳優さんについて、
高橋さんの笑顔、内田さんの挑戦、盛り沢山の内容でした。


そうそう稽古見学会の様子も映し出されて、終わったあと、
タオルを首にかけながら、グレーのTシャツを無造作に着て表れる小栗くんとか。
小栗くんは全然ラフな雰囲気(頭、ボサボサとか、足をボリボリ掻いていたりとか)
だったり、コツンと蜷川さんに頭をたたかれる小栗くんの笑顔とか、
悩める、焦る表情、ふとした美しい横顔、ハッとするような白い肌、
負けず嫌いな瞳、白いタンクトップから見える、
ほどよい筋肉のついた綺麗な肩、鎖骨、腕、ひときわ高い背、
やっぱり目をひく、綺麗な男の子だなあって思ったり。
それとともに、彼の真摯に向かっていく攻めていく気持ちの清々しさに、
感動しながら見ていました。


そして舞台の様子もちょくちょく映ったので、思い出してはまたどきどきしていて、
最後は初日、舞台へ向かう役者さんたち、走りぬけるアンティフォラス。
それから終わった後、「よかったよかった」と二人で言いあいながら抱き合う、
小栗くんと蜷川さん。そのときの小栗くんの笑顔が最高に素敵で、
小栗くんは努力の人なんだなあとか、まわりの彼への期待のかけ方と、
こんなにも温かく、時には厳しく彼を育てようとしている思いとか、
こうやって「間違いの喜劇」は出来上がって、私たちに幸せをくれたんだって思うと、
心にたくさんたくさん響いてきて、胸がいっぱいになってしまいました。
とてもいい番組だったと思います。


“基礎的なことをやっていないと表現者は長生きしない。
それをやっていないとメディアや、観客に食い荒らされ、捨てられる。
そうならないために、小栗に基礎的栄養を与えてるんだ。”
小栗くん、23歳のときですね。
ちょうど「間違いの喜劇」稽古中に23歳のお誕生日を迎えていました。
そういう基礎を蜷川さんに教えていただいたからこそ、
今でも小栗くんは活躍できているのだと思います。
俳優小栗くん本人を大切に思ってくださっていることが、
凄く伝わってきて、胸が熱くなりますね。
蜷川さんには本当に感謝の思いでいっぱいです。
また蜷川さんのもとで、できたらシェイクスピアを演じてほしいなあと思います。