風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

子ネコ にじ リンゴ

晴れたり曇ったりしています。今日も寒い一日になりました。
詩人のまど・みちおさんが、先月2月28日、104歳でお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。
詩はこのブログでもときどき書かせてもらっていました。
優しい目線のあたたかい詩が多くて、そしてユーモアがあって、
誰にでもわかる易しい言葉で書かれていました。
やさしいやさしい詩だったと思います。


<ケムシ>


さんぱつは きらい


<チョウチョウ>


こころなら
こんなに きれいなの・・・
そう いって
でてくるのかしら
もじゃもじゃけむしから
いつも
チョウチョウは


<子ネコ>


おとなりに 行って
生まれたばかりの子ネコを
だかせてもらった


あたしのむねに ねて
子ネコは かるくて小さくて
目をつぶっていてあげたいくらいに
かすかだった


あんまり かわいいから
こんなに すきとおるような
きれいなにおいが するのかしら・・・


そういったら おばさんがわらった
―ほほほ あそこに
  ジンチョウゲがさいているのよ


<にじ>


にじ
にじ
にじ


ママ 
あの ちょうど したに
すわって
あかちゃんに
おっぱい あげて


<ぼくは何を>


ぼくは 何をもっているのだ
やさしさなら お母さんがもっている
勇気なら お父さんが
すなおさなら ポチが
賢さなら 先生がもっている
がまん強さなら 冬のムギが
勤勉さなら 夏のアリが
そして 美しさなら
道ばたの一本のタンポポがもっている
で ぼくよ 何をもっているのだ
いつも後で しまったと思う
おっちょこちょいと
だれにも負けない いたずら心のほかに・・・
笑うなかれ!
希望だ・・・
やさしくて 勇気があって
すなおで 賢くて
がまん強くて 勤勉な
美しい心
に ぼくを少しでも近づけたいという・・・


笑うなかれ!
という ぼくよ
自分で笑っちゃ サマにならぬぞよ!


<リンゴ>


リンゴを ひとつ
ここに おくと


リンゴの
この 大きさは
この リンゴだけで
いっぱいだ


リンゴが ひとつ
ここに ある
ほかには
なんにも ない


ああ ここで
あることと
ないことが
まぶしいように
ぴったりだ


つい微笑んでしまう詩が多いです。
小さきもの、弱きものへの愛情も感じますし、素朴で、
独特のユーモアによって、詩全体が軽やかさ、おおらかさに包まれ、
そしてその中に真実がちゃんとある気がします。
この「りんご」の詩のように、
ちょっと哲学的な詩も好きです。
潔く清々しくて力強く、
もちろん真っ赤なリンゴも思い浮かぶのですが、
宇宙も感じられるような、良い詩だなあと思います。