風色の椅子 第二楽章

小栗旬さんのファンブログ やや耽美主義

羅針盤

よく晴れました。
昨日、NHKクローズアップ現代」を見ました。蜷川さんの特集です。
小栗くん、インタビューを受けていました。
小栗くんが手に持っていた写真は、24日にも紹介した「千の目」のときの写真です。
【 NINAGAWA 千の目 小栗旬×蜷川幸雄 】
二人の笑顔がいいですね。
それから紫の便箋に、蜷川さんの字でしょうか、
カリギュラ」の一節(カリギュラのケレアへの言葉)が書かれていました。


『 同じ魂と誇り高さを持っているふたりの男が、生きているうちに少なくとも一度、
心の底から話をするのは、可能だと思うか。
偏見や、個人の利害関係や、嘘といった、生のよりどころをぜんぶ脱ぎ捨て、
おたがい丸裸になって。』


これは蜷川さんから小栗くんへの手紙でしょうか。
カリギュラ」の台詞にリンクさせて、ふたりの関係を暗示しているのでしょうか。
これからの舞台「カリギュラ」への向き合い方を示しているのでしょうか。
小栗くん、とても大事そうに持っていました。その手紙の話は出なかったのですが。
インタビューの様子です。


ーー二十歳のときに蜷川さんの舞台に抜擢された小栗旬さんです。
   蜷川さんの死をうまく整理できずにいる小栗さん。
   蜷川さんがどういう存在だったのか伝えたいとインタビューに応じました。
小栗「次のステップアップさせるためにこれが必要であるってことを、
   事前に自分のいろいろな情報を仕入れて、
   今の小栗には次はこういうことが必要かなということを考えて、
   それに気づくまで闘い続けて、自分と向き合ってくれるということを、
   やってくれるというのは、やっぱりいま自分ができるかって言われたら、
   なかなか出来ることじゃないと思うんですよね。」
ーーときに出演を巡って意見がすれ違い、
   距離を置いていた時期もあったといいます。
   しかし今年、7年ぶりに蜷川作品に出る約束をしていました。
小栗「お前みたいな生意気なやつとはもう一緒に仕事をしたくない」と、
   よく言われてましたけどね。
   稽古場で面と向かって自分をさらけ出した瞬間に、
   蜷川さんに言われる言葉っていうのは、
   やっぱり稽古場でなければ分からないことだったので、
   今の自分をもう一回蜷川さんに見せて、
   ボコボコに言われるのか、少しはよくなったと言われるのか、
   本当にそれを聞きたかったというのが正直なところですね。」
ーー蜷川さんが残した言葉が、
   これからの役者としての羅針盤になると考えています。
小栗「蜷川さんがここまで自分のことを押してくれなかったら、間違いなく、
   いま自分はこんな形で仕事してないと思うので、
   蜷川作品に出て、「面白いやつがいるね」って、声をかけてくれた人たちが、
   いっぱいいると思うので、この人生を歩めていることは、
   やっぱり蜷川さんのおかげだなと思うことはすごくありますね。
   もらったものは全体的に全部かなという感じです。」


私はこの頃、ふと思うことがあって、
大切に大切にしていたガラスの瓶。
それは「蜷川演出小栗ハムレット」というラベルが貼られるはずの瓶でした。
カリギュラ」のときのように、
「誇り、狂気、滑稽、侮蔑、残酷、傲慢、恐怖、見せしめ、気まぐれ。
叫び、脆さ、繊細、嘘、なぐさめ、諦め、望み、絶望、甘さ、優しさ・・・。」
それらがひしめくように、詰め込められていて、
観たこともない美しさで色で匂いで世界で、
それはそれは心奪われて、そんな素晴らしい瓶がまた並ぶはずでした。
でも「蜷川演出小栗ハムレット」の瓶はずっとずっと空っぽのまま。
いろいろな瓶の隣に置くのも虚しい。
その後、いえいえ、他の役で、すぐにでも中身を、
いっぱいにしてほしいと思うようになりました。
早く早くラベルは違っても、満杯の瓶が見たい。
でもね。昨日のインタビューを受けた、元気のない小栗くんを見ていると、
私がこんなに焦ってどうするんだって、思いました。
少しずつ少しずつ、かけらを集めて瓶に入れていけばいいんですよね。
蜷川さんが残した言葉がこれからの役者としての羅針盤になってくれるって、
だからゆっくりゆっくり歩めばいいんですよね。
蜷川さんからの愛は小栗くんが一番一番わかっていると思うので、
きっと天国からも叱ってくれると思うので、
蜷川さんには本当に感謝しかありません。
役者としてもらったものは全部だったと言った小栗くん。
指し示す羅針盤を信じて、
その小栗くんの役者人生をまた見続けていけたらなあと思います。


そして「クローズアップ現代」最後は実花さんが作ったムービー、
蜷川さんとお孫さんとの微笑ましい写真が並びました。
こんなにも優しい穏やかな時間が存在していたんだなあと思いました。
流れていた曲はシガーロス
蜷川さんがお好きなのは知っていましたが、
息子もシガーロスが好きで、曲名を教えてくれました。
「VAKA」という曲だそうです。
調べたら「海辺のカフカ」でも使われていたのですね。
息子と二人でやはり「海辺のカフカ」は観たかったなあと話しました。